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「霊界本部では、今、死期が迫った人に対して、魂の生前エクスチェンジを推奨しています。肉体の死を迎える直前に、クライアント様の要望に沿った条件を持つ、出生直前の胎児の肉体に魂を移転させるのです。私たち魂コーディネーターは、クライアント様の要望を聞いて、なるべく条件を満たすことができるような胎児を見つけ出して、魂の移転までお世話させていただくのが任務です」 「魂の生前エクスチェンジって・・・・」  サトコが言いかけた時、消灯前の巡回のため看護師が病室に入ってきた。ユウキは一旦、狭い病室の窓際に下がった。 「角谷さん、おかげんはどうですか、どこか痛いところはありますか」 「大丈夫です」  とサトコは言いながら、驚いたように看護師とユウキを交互に見比べた。 「何かあったら、ナースコールを押して下さいね。おやすみなさい」  と言って、看護師は布団の裾を手早く直すと、病室から出て行った。  サトコが口を開き、 「ユウキさん、でしたっけ。看護師さんにはあなたのことが見えないのですか?」 「普通は、人からは見えません。私が意識を向けて話しかけている人にだけは姿が見えます。それと、程度の差はありますが、いわゆる霊感の強い人は私達のことが見えるようです」 「あなたは幽霊なんですか?」 「死神でもなければ、幽霊でもありません。霊界スタッフの魂コーディネーターです」 「今日は自己紹介だけするつもりで来ました。夜も遅いので、失礼させて頂きます。また、お伺いします。おやすみなさい」  と言って、ユウキは姿を消した。
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