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「角谷さん、奥様の病状は最終段階であると言わなくてはなりません。症状の改善は期待できませんし、血栓の影響で、これから内蔵各器官の機能も著しく低下していきます。正直言って、大学病院の先進医療が効果的な段階は過ぎてしまいました。今後は、看病に行くにも、ご自宅から近い方が負担が少ないでしょうし・・・。  新厩橋駅前の新厩橋病院なら、ご自宅からも近いですし、院長も知っていますので、紹介状を書けますが」  沙都子の主治医は言いました。 「もう打つ手はないということでしょうか?」  と隆行が聞くと、主治医は、 「そう解釈して頂いて構いません」  との返答でした。  医者から匙を投げられた、ということなのでしょう。  診察室を出て、沙都子の病室へ向かって歩きながら、主治医の話をどう話そうか、考えていました。転院の時期については、主治医から「師走は、緊急以外の転院はどこの病院も受け入れないので」とのことで、年が明けてからということになりました。    妻の沙都子は、結婚して間もない二十六歳の時、子宮筋腫の検査を受けたことがきっかけで、本態性血小板血症という病気が見つかりました。     
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