2  クローズドサークル

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2  クローズドサークル

 マルオは黄金の剣でゾンビを次々に倒していった。ゾンビは白いシャツを着ていた。 「源氏の亡霊かしら?」  ミーコはブルブル震えてる。  旅館に戻った。平荘、どんな階級の人間もここに来るとヒラになってしまうらしい。  まあ、マルオやミーコはヒラだから心配する必要なし! 「ワタシ、明日はずっと宿にいるよ」  台風が接近していて船が動かない。  逃げられなくなった。 「クローズドサークル、『そして誰もいなくなった』みたいだ」  マルオは最近、アガサ・クリスティにはまっていた。  畝原恭兵を島に来るときのフェリーで見かけた。  中学3年のときにマルオは校内で起きた殺人事件を解決、畝原はそのとき世話になった静岡県警の刑事だ。今はとっくに定年退職を迎えて優雅なセカンドライフを送っているらしい。  畝原は別の宿に泊まっている。  横内瑛太は元気だろうか?畝原の部下の刑事だ。  大橋邦彦ってミステリー作家がロビーのソファでホットコーヒーを飲んでいた。 『犬島殺人事件』ってのを書いているらしい。 「犬ってのは大に耳をつけたものだ」と、大橋が言っていた。  他にこの宿には小泉明美、黒木冴香、香椎真由、飯野幸恵、橋本真奈美ってOL5人組。  古河智人ってチンピラみたいな20代、横山丈史郎と栗空太作って40代コンビが客として来ている。マルオはコミュニケーション能力が高く、客全員を把握した。  平荘の従業員はパパイヤ岡本、榎健治がホテルマン。榎は送迎バスの運転、パパイヤはフロント係。  ベットメイキングや掃除は平潤、調理は平健幸、オーナーは平幸治。幸治は父親、役所広司に似てる。潤が長男、健幸が次男。 「奥さんはどうしたんです?」とマルオはズケズケ聞いた。マルオは相手に喋らせる魔術が使えた。 「ゴルフばっかりしてたら逃げられた」  鴎の間、横山と真奈美は抱き合っていた。 「奥さんと別れてくれなきゃ死んでやるから」 「困るよぉ」  真奈美の細い腕に鳥みたいな目が現れた。 「キャァッ!」  横山は聞いたことがあった。藤原秀郷って大昔の侍が盗む癖のある女を斬り殺したら、怪物へと変貌した。  真奈美は百目へと変貌した。   男の心を盗んだことによる副作用だ。 「助けてぇ!」  真奈美は宿から飛び出し、どこからかやって来た馬にむしゃぶりついた。ムシャムシャ、クチャクチャ。  平潤が弓矢を手にして駆けつけた。
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