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5 土蜘蛛
槍の横山、刀の古河を従えマルオは女子風呂の前に立っていた。ドキドキする。ミーコ以外の裸を拝めるとは、大島に来てよかったなぁ?
朱色の『姫』って和彫りされた暖簾を潜ってマルオは腰を抜かした。巨大なクモがゴショゴショ現れたのだ。
土蜘蛛だ!反逆児がコイツに進化するって言われてる。茨城、大分、奈良、長崎にも棲んでいる。
「ヒィィッ!」
古河は悲鳴を上げた。
昆虫採集なんか大嫌いで、夏休みの課題学習は『伊豆に店が何個あるか?』をやった。
マルオは粗チンを見せた。
土蜘蛛は泡を吹いている。
古河が頭を刀で、横山が背中を槍で突いた!
緑色の血液を流して土蜘蛛が死んだ。
栗空が駆けつけた。
「今頃何やってんだ!?」
横山が語気をあらげる。
「クソしてたんだ仕方ないだろ?」
土蜘蛛から黒木冴香に戻った。
「スゲー胸だな?」
栗空が鼻息を荒くする。
「Eカップはあるな?」
古河が言った。
変わり果てた黒木を目にした、小泉明美が涙を溢した。
「彼女にイロハを教えたのはワタシなの」
ドラゴンボールZの歌を思いだし、マルオは明美を慰めた。
「泣いてる場合じゃない」
黒木は反逆児だった。明美や真由、幸恵もヤバい連中なのか?
横山が腕時計を見た。
「もう7時か、ニュースでも見ようかな?」
ロビーに戻ると大橋がコーヒーを飲んでいた。
「呆れちゃうな?何のためにアンタに剣を渡したんだ?」
マルオは憤慨した。
「そう怒らないでくださいよ?福岡の吉井町って知ってます?」
「何の話です?」
「メズラシヅカ古墳ってのがあるんです」
「ミステリー小説の話なんかしてる場合じゃない」
「まぁ、聞いてくださいよ、そこにはゴンドラみたいな船が描かれてるんだ。太陽や月、矢を入れる筒や盾、ヒキガエル、鳥などが描かれてる」
「ああ、その鳥ってのが死者の魂をあの世に先導するんでしょ?」
「詳しいな?マルオ君は何の仕事をしてるんだ?」
「医者をしていた」
「スゴいじゃない」
マルオは部屋に戻った。
ミーコはニンテンドーDSで『鬼トレ』をやっていた。
「ボケ防止になるのよ?」
「まだ30代だろ?」
「何があったの?」
「風呂場に蜘蛛の化け物がいた。黒木さんが化けたものだった」
「蜘蛛が黒木さんに化けてたんじゃなくて?」
「あっ、そうか」
マルオはスマホで畝原に電話した。
《どうした?》
経緯を話した。
「黒木冴香って女を知らないか?」
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