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朝晩はまだ肌寒いそんなある日の夕方。
ごみを捨てに裏に回ると、どこからともなく鳴き声が聞こえた気がした。
振り向くと、大きめの四輪駆動車。
エンジンは切ってあった。
「……にゃあ…」
消え入りそうな、風に掻き消されそうな微かな声を頼りに近づくと、やはりその車かららしい。
けれど車内からにしては感じが違う。弱っているようにも聞こえる。
「ちょっとあなた、なにしてるの?!」
買い物を済ませた運転手らしい女性に声を掛けられハッとする。
真っ赤なロングニットから見えないくらいのショートパンツ。
濃い化粧、強い香水、派手な雰囲気。
猫とは無縁そうだ。
「あの、変なことをお伺いしますが、中に猫ちゃん、いますか?」
いるならいるでいいんだけど、と。
けれどあからさまに怪訝な顔で見られる。
そりゃそうだろう。
「は?!いないわよ!どいてくんない?邪魔だから。寒いし。牽いちゃうわよ?」
寒いわりには薄着だ。
「いや、でも…」
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