*出会いは

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しぶしぶ助手席にあったファーコートを取ると、ボンネットを開ける。 「おいで。大丈夫だよ」 奥の隙間に手を入れ、小さな子猫を救い出す。 「あっ…いた」 「マジ…?」 女性も驚く。 「この時期、野良猫はこういう暖かい場所を探して入り込んだりするものです。このままエンジンを掛けて走ったら中で焼け死んでましたよ。危なかったですね」 「ええっ?!」 女2人、口元に手を当て声が揃う。 「車に乗る人は、乗る前に確認しないといけないのですよ。陰に子供が隠れているかもしれませんしね。愛車を傷物にするのも、生き物を惨殺するのも嫌でしょう?」 落ち着いて話すと猫の汚れを拭き取り抱き寄せる。 「この子、お預かりしてもよろしいですか?一応病院に連れていきますので」 「あっ、はい。もちろんお願いできれば」 そしてジッパーを絞めた懐に猫を入れると、フルフェイスのヘルメットを被り、乗ってきたらしいバイクに跨がりエンジンを掛け、走り去った。 なんか妙に格好いい。
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