*届け物

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けれどそれから2週間。 その人は来なかった。 商品の整理と陳列をしながら、猫のおやつが目に入り、なんとなく思い出す。 事務所にいた店長が出てきた。 「橘さん、午後空いてる?」 「はあ、空いてますが」 今日は早朝勤務で、午後にはまたハローワークにでも行ってみようと思ったくらいだった。 「この前、落とし物で万年筆があったんだけど」 「ああ、ありますね」 カウンターの中に段ボール箱があり、マフラーや手袋はそこに纏めてある。 鍵や財布小銭入れなど、貴重品と思われるものは事務所に保管されていた。 使い込まれた万年筆を手に取る。 「聞いてたのすっかり忘れてて。今しがた、ほらこの前の猫のお客様から電話来て、届けてほしいそうなんだ」 「ダメじゃないですか!」
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