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「どちら様…?」
「こうすればわかるかな」
前髪を手で掻き上げ、眼鏡を外して見せた。
「昂祐さん」
今のコンビニに入り立ての頃、半年くらい一緒のシフトで教えてもらったひとつ先輩の、蕨昂祐さんだった。
辞めてから引っ越しもしたらしく、教えてくれた連絡先も、慌ただしく疎遠になっていた。
というかわたしがそこまでする気がなかった。
当時、髪を上げていた顔しか記憶になく、雰囲気もずいぶん変わって、ましてやここで会うとも思わない。
普通に親しかった。
当時のバイトの女子は夢中で、プレゼント攻撃やらシフト申請を、積極的に出してたみたいだけど。
男子として見ていなかったわたしには、同性並みにしか写らなかった。
顔も忘れるような、その程度の存在。
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