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マスクをしたままひと言も口を利いてくれない。
「…あの、ペットシッターのお仕事って、どういう…」
言っている間に、ひとつのマンションの前で停まった。
比較的新しそうなお洒落な外観の、20階建てくらいの建物。
無言で車から降りる董坂さんに着いて出る。
マンションの5階。
インターホンを押すと、30代くらいの女性が出た。
「お待ちしてました。あら?新人さん?」
オフホワイトのフリルワンピースに黒のライダースジャケットを肩に羽織り、茶髪を巻き、メイクもバッチリな女性は、これから出掛けるようだ。
「はい。今日からサポートしてもらうことになりました」
肘で突つかれる。
「あっ、橘です。お願いします」
営業スマイルが半端ない。
さっきまで能面のごとく、にこりともせず運転してたのに。
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