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その声もいつもの人だ。
この半年くらい、週に何度か見かける。
こちらも30歳後半くらいのいかついお兄さん。
ただ、作業着のお兄さんより頭ひとつ分は高い。無造作にセットした髪。肩幅広めの筋肉質。
白縁眼鏡のインテリ風。
「急いでるなら外で買うか他のレジにいかれたらどうですか?いつもいつも」
「なんだと?」
言って振り向くけれど、自分より強そうな相手だと見ると、舌打ちして黙る。
ブスッとしたままお会計を済ませて立ち去った。
「急いでいるのは大体誰でも同じです。気にすることないですよ」
この人はお握り2つと烏龍茶。ときどき猫のおやつ。
猫、飼ってるのかな。
そんなこと聞けるはずもない。
世間話をする余裕もない。
口よりはまず、手を早くしなくては。
「ありがとうございました。助かりました」
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