3.本質

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 思わず土下座した。シュークリームだってタダじゃない。買う量を膨大にされたら、今後の生活に支障をきたす。 「・・・まあ、それは置いとくとして。私の家の決まりで、基本的には陰陽師としての仕事をしている最中は、人に姿を見られちゃいけないし、顔を明かしちゃいけない決まりになっているんですよ。能力を悪用されないために。」 「だから逃げ回ってたのか。」 「・・・・ええ、そんなところです。だからお兄さんがくじけるまで待ってたんですけど、昔と変わらず負けず嫌いなもんだから。なんだか悪い気がしてこっちから折れましたよ。どうせ面割れしてるしと思って。」  橙子は恥ずかしそうに頬をかく。やはり見つかることは想定外だったのだろう。 「なんか邪魔して悪かったな。」 「いえいえ、かえってこっちの方のが都合がいいです。夜中に忍び込んだりしなくてもよくなりましたから。ルール違反ですけどね。」 (ちょっと待て。不法侵入はOKなのかよ。) 彼女の言葉に思わず突っ込みを入れそうになったが飲み込んだ。また口答えすれば今度こそ買いに行くシュークリームの量が大変なことになる。 「それに、今回姿を明かすことになったのは、最初にお兄さんの部屋を訪れたとき、私がお兄さんに目撃されたっていうミスがそもそものはじまりなので。」     
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