3.本質

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3.本質

 俺と橙子は「あの家」に向かい一緒に歩いていた。  俺は橙子に今までの家で起きた不可思議な出来事について説明した。勝手に物が宙を舞い、ひとりでにどこかに行ってしまうこと。甘いものは大抵「誰か」に食べられてしまうこと。  説明を聞いた橙子は少し考え込んだ後、 「おそらく状況から察するに、お兄さんの家にいるのは低級の悪霊です。人の家にいついて、時折いたずらを働く程度の。」 「もっとひどい事例だと、入居初日に幽霊に鼻や目玉をもがれた人もいますから。」: と、涼しげな顔で恐ろしいことを言った。陰陽師の闇は深い。 「そ・れ・よ・り・も。親切で除霊しに来てあげたのに私のこと忘れてたうえ犯人扱いなんてあんまりじゃあないですかあー」  まだ完全に機嫌が直ったわけではないようだ。橙子は口をとがらせ、こちらへ不満を訴えてきた。 「逃げるから余計に疑われるんだよ」  それならそれで初めから事情を説明してこちらにとりなせばよかったのに、とつくづく思う。 「シュークリームのノルマ増やしますよ」  途端、橙子は鋭い目で俺を睨んだ。 「すいませんでしたァ!」     
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