5.「今」

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5.「今」

「やめろ!」  俺は律と橙子の間に割って入り、妹をかばった。 「邪魔です、お兄さん。その人を成仏させられません」 「だめだ。成仏なんかさせるもんか。もう助けられないのはごめんだ。」 「・・・・思い出してしまったんですね、つらいことなのに。」  橙子はより一層悲しそうな目をして、俺を見つめた。 「だからこそだ。俺はどんな形に変わろうと、こいつだけは守り抜く。」 「ちょ・・・ちょっとお」  律は顔を赤らめるとうつむいた。 「だから聞いてよもー。あたしは悪霊じゃないんだってばあー」  腕を懸命に振り回し、律は自分が無実であることを訴える。 「ならなんだっていうのよ」  橙子は札をくるりと回して、俺に向かって突き付けた。 「さっきから言ってるじゃない!生霊よ!」  律は怒鳴った。 「・・・。」  橙子は眉をひそめて、怪訝そうに律と俺を見つめた。 「・・・。」  橙子とにらみ合う。なにが起きてもここを動く気はなかった。本当に必要なものは、守るべき家族だった。今、それを失っては、俺は本当に何もなくなってしまう。 「あのねお兄ちゃん」  そんな俺たちをわき目に、律はしゃべりだした。     
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