第4話

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 速水は人質を2階に全員移動させた。いま外に出ても、大きなマトが溢れるだけだ。  2階フロアの受付の奥の方に全員を避難させ、近くのイスにすわった。 「はーい、もう大丈夫だからね。俺の友達が外の奴らもぶっこ…じゃなかった、制圧してくれるから、もうちょい待っててね!」  自分の仕事はこれで終わりかと思い、安堵のため息を漏らした時だった。流れ弾が2階の窓ガラスを貫通した。窓から離れていたので誰にも当たる事はなかったが、人質の悲鳴が響いた。 「びっくりしたぁ!あぁたつみん達、早く殺ってくれぇ…。」  小鳥遊はかなり上の方を飛び、逃げ遅れた人がいないかを探していた。小鳥遊の体には、電気になった石川が帯電している。  銀行前には警察官の遺体がいくつもあり、流れ弾が当たった人も何人か見える。所々煙が立ち込め、酷い有様だった。 「石川さん、誰か見かけたら教えてね。」 「り!ってあー!ビルとビルの間に泣いてる女の子!後方右斜めのところ!」 「了解!」  小鳥遊はすぐ後ろを向いて、少女を見つけると全速力で飛んで行った。  そして少女を抱っこして、すぐにビルの屋上に避難した。女の子は何が起きたのかわからず、泣いたままだ。小鳥遊の体から、石川が分離して女の子の頭を撫でた。 「大丈夫?私は希子(きこ)、あなたは?」 「…ぅっ………はな……。」 「花ちゃんね、お父さんかお母さんは?」  花は泣きながら下の方を指差した。 「パパは地面に倒れちゃった…。ママは気付いたらいなくて…。」  小鳥遊と希子は息を呑んだ。この子の父親はもう…。  石川は花を抱きしめ、小鳥遊の方を向いた。 「なっしー、私は花ちゃんとここにいるからお母さん探して来てくれる?」 「わかってるよ。」  小鳥遊はそう言い残して、空へ飛び立った。
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