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「もう少しです!」
「頑張ってください!」
分娩室に助産師2人と母親の辛さをにじませた声が響く。ここは、東京のとある産婦人科の一室で今まさに赤子が生まれようとしていた。
そして数十分後、分娩室には元気な赤子の産声が響き、少しして赤子は静かに寝息を立てはじめた。
「おめでとうございます!元気な女の子ですよ!」
「………ありがとうございます。」
助産師の言葉に、母親は静かに寝息を立てる赤子を見つめ目に涙を浮かべながら嬉しそうに答えた。
「碧さん、おめでとうございます。今、旦那さんを呼んできますね。」
そう言い残して担当医は足早に出て行った。
「お名前はもう決めてるんですか?」
「はい。名前は…」
母親が名前を言いかけた時、ある事に気付いた。赤子の腕に何か小さな棘のようなものが見えたのだ。
何かと思い手を伸ばそうとしたその瞬間、赤子の体から無数の棘の生えた太い#蔦__つた__#が何本も部屋中を駆け巡った。蔦はその場にいた母を含む3人の体を傷つけながら部屋中に伸びた。
後に父親と担当医が部屋の扉を開けると、そこには部屋中に蔦が伸び、あたりに血が吹き飛んでいた。
母親の亡骸のとなりで、赤子は静かに寝息を立てていた。
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