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母がパンッっと手を叩きその場を沈ませる。
「あなた? さすがにそれはカッコ悪すぎよ」
「…………」
父は母親の気迫に気押され何も言えなくなった。何だかんだ母さんには手も足も出ないんだよな、この人は。
「私はねユウちゃんの気持ちをずっと知りたかった。自分から意見を言うことだって一度もなかったから。だから正社員でもなんでも自分で決めた道に進んでくれればってずっと思ってたの。」
「うん……」
「でね?今初めて私たちを呼んで初めて自分のやりたいことを伝えてくれた、今のユウちゃんの目を見たらわかる。本気だってことは」
母は俺の手を握って笑顔で言葉を紡ぐ
「やってきなさいよ! 料理は私がやるわよ! なんなら父さんにもやらせるわ!」
「いいの?ほんとに」
「さっきのあなたの目を見てたらいいよって言わなくても行っちゃいそうだったけど、そんなの後味悪いもの。いいわよね?あなた」
「……行くからには絶対音を上げるなよ。帰ってきたら承知しないからな」
そう言うと父は自分の部屋に戻っていった。なんか哀しそうな顔に見えたけど気のせいかな。
「あれはね、頑張れってことよ。ほんっと不器用な人よねー」
「ハハハ……」
結局母に助けられた形になったけど、立つ鳥跡を濁さず。絶縁なんてことはならなくて本当に良かったと思う。
ゴールの見えない俺の未来への道がこれで開かれた。この道の先には何があるんだろうか。今までどんなことにも関心がなかった俺だけど、今日からは考えることは放棄しない。俺が心の底から楽しいと生きていると実感できることを見つけるために。
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