第三話・目論みました。

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第三話・目論みました。

「あの、どういうことでしょう?」  私が尋ねると、風間さんは微苦笑する。 「実は、私共は封印されてしまった魔王という莫大なエネルギーを復活させようとしておりました」 「え?」 「昔話であるんだよ。魔王って物質がね。なんでそんな名前がつけられてるのかは知らないけど、その莫大なエネルギーを手にした者は世界を変えるほどの力を得るって言われてるわけ」  黒田くん――クロちゃんが、話しに入ってきた。 「魔王を受け入れるための器を用意して魔王の封印を解いたわけ。魔王をその器に入れるために。でも、何故かその器であるおっさんは消えて、キミが現れた」 「小娘、貴様の話によれば、白い空間とやらで出会った中年の男は、我々が用意した器である可能性が非常に高い。そいつが小娘の中へ入ったとなれば――」 「当然、魔王もキミの中ってわけだ」 「……は?」  何言ってるの、この人達。 「贄の男に魔王が宿っていたかは不明だが、魔王は確実に貴様の中だろう」  毛利さんは確信を持った口調で言って、風間さんに一瞬視線を向けた。風間さんは気づかなかったみたいで、私を申し訳なさそうに見た。 「我々は魔王を手にし、それぞれの願いを叶えようとしておりました。しかし、何故か貴女が我々のところへやってきてしまった。そして、おそらく、別の世界から……」 「別? の、世界?」  ますます何言ってるの。風間さんって、残念美人なんだ。それともみんなしてからかってるとか? 「あのう、私本当にそろそろ帰りたいので……。始発多分もうやってると思うんで、駅名教えていただければ、スマホで――あ、そっか」  ネットで調べれば現在地分かるじゃん。 「すみません、私の鞄ってどこですか? スマホ入ってるので、両親に連絡もしたいし。さっきの部屋にはなかったみたいなので……預かってたりしません?」  みんなは不思議そうな顔で互いの顔を見合わせた。毛利さんは無表情だったけど。 「申し訳ございません。鞄は見ておりません」 「あのさ、スマホってなに?」  好奇心が見え隠れしながら、雪村くんが訊く。 「スマホは、スマートフォンの略で……。いやいや、からかわないでくださいよ。スマホ知らない人なんていないじゃないですか」  苦笑すると、雪村くんはきょとんとして首を捻った。 (えっ、本気!? スマホ知らない人なんているんだ) 「いや、とにかく! 私帰りたいんです。鞄がないんなら、ここがどこなのか教えてください! 自力で近場の駅にでも行くので!」 幸いポケットに電子マネー入ってるし。――入ってるよね? 不安になって、スカートのポケットに手を突っ込むと薄くて四角い感覚がある。 (良かったぁ。入ってた!) 「ですから、申し訳ございませんがお帰しできないんです」  風間さんが申し訳なさそうに頭を下げる。 「貴女がやってきたのは、我々にしてみれば、想定外の事故のようなもので……正直申し上げて、帰し方がわからないのです」 「異世界のやつなんて、初めて見たしなぁ!」  豪快に笑って、花野井さんが酒瓶を煽る。 「可哀想だが、嬢ちゃん。もうしばらく、ここにいるしかねぇな」 「そういうことだな」 (……え、マジ?)  真面目そうな毛利さんや、年長者っぽい花野井さんまでそんな、異世界なんて変なこと言うなんて……。  私は五人を見回す。 (この人達、かっこうとか容姿も少し変だし……もしかして、新手の変な宗教なんじゃ!?)  もしかして私、昨日登校途中にこの人達に拉致られたんじゃない? それで、妙なことを吹き込んで変な宗教を信じ込ませようとしてるんじゃ? (ヤバイ! 逃げなきゃ!)  とりあえず、ここは話をあわせて、油断させて逃げよう。幸い縁側から抜け出せそうだし。 「わ、わかりました。魔王ってやつが私に入っちゃったんですよね? で、帰り方はわからないと」 「はい。申し訳ございません」  風間さんは深々と頭を下げる。 「じゃあ……とりあえず、私、まだ混乱してるので、さっきの部屋に戻ってても良いでしょうか?」 「そうですよね。お戻りになられてください。あっ、部屋わかりますか?」 「わかります!」  ついてこようとする風間さんを止めて、私はそそくさと部屋を出た。
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