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「ついに、ついに、ついに完成したぞぉぉぉぉい!!」
2059年春、老博士は喜びとともに拳を天につきあげました。いったい何を完成させたのでしょう? あ、私はただの助手です。
「このタイムリープ装置を使って過去に戻って、わしの初恋の相手、岡崎夏菜子をわしのものにするのじゃ!」
「博士の助手になって20年。長年の研究がついに実ったのですね。うれしいです」
「ああ……、年1回しか使えないし、30分ぐらいしか過去に戻れんがな。40年前に戻って音羽翼に取られる前に彼女をわしのものにするには十分じゃ! 助手くん、タイマーをセットしたまえ」
私はスイッチを操作しました。ちょっとだけずらして。
「準備は良いか? もちろんじゃあああー!」
博士の掛け声とともに、やって来たのは2019年春。東京文化大学の正門前みたいです。私は当時の姿が無いので幽霊みたいになっていて、博士は冴えない男の子のような感じです。
時間は夕方ぐらいでしょうか……、か、夏菜子さんがやってきました。
「さあ行くぞお!」
彼がおか……、彼女に近づいていきました。
「あの、夏菜子さん?」
「あら、田中くん、急にどうしたの?」
「実は、その……」
「なあに?」
「あ、貴女のことが、ずっと前から好きでした、付き合ってください!」
なんとか言えましたが、夏菜子さんはしばらく立ち尽くした後、
「ごめんなさい、好きな人が別にいますので」
「そ、そんな、あれだけ苦労してここまで来たのに……」
彼はその場にへたり込んでしまいました。そこにおと、音羽翼くんがやってきました。
「夏菜子、何かあったのか?」
「え? ううん、なんでもないよ。行きましょう」
2人は冴えない男子学生から離れて行きました。ここでタイムリミットとなったようです。
「失敗してしまったか……、しかし、今度こそ成功させてやるわい!」
「お言葉ですが、恋はあきらめてはいかがでしょうか? それよりも……」
「いや、ワシはあきらめん!」
あれでは何度やっても難しいでしょう。それにしてもホッとしました。
何故って? 私は翼さんと夏菜子さんの娘ですもの。博士には秘密にしてますけどね。
彼の思う通りになったら私は消えちゃうじゃないですか。だからタイムリープ先を2人が付き合い始めた後にしたんです。
いいかげん、私と籍を入れてくれればいいのに……。
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