亡き兄へのバレンタインプレゼント

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私の名前は『美結(みゆ)』、高校1年生で女子テニス部に所属している。 私には2歳年上の『来夢(らいむ)』という名前の高校3年生の兄がいて、兄も同じ高校の男子テニス部に所属していてキャプテンを務めている。 私がテニスを始めたきっかけは、大好きな兄が所属しているテニス部に入部して兄と一緒にテニスをしたかったからだ。 私は子供の頃から兄のことが大好きで、何をするにも兄と一緒のことがしたかった。 8月に高校テニスのインターハイがあり、1年生の私はレギュラーに入ることはできないが、兄は団体戦と個人戦の両方に出場することになっていて活躍が期待されていた。 兄はよく、このインターハイの個人戦で優勝したいという夢を語っていて、そんな兄を私は頼もしい存在だと思っていた。 私は兄からテニスを教えてもらっていたがよく兄から、 「美結はテニスのセンスがいいと思うよ!」 と褒められていた。 私にとって兄は憧れの存在で、兄から褒められるととても嬉しかった。 高校のテニス部に入部して部活動にも少し慣れてきた7月のある日、部活動を終えた私は兄と一緒に帰宅した。 電車通学だった兄と私は、自宅の最寄り駅で下車して自宅に向かって歩いていた。 時刻は20時を過ぎて、商店街を抜けて住宅街に入ると、辺りは一層薄暗く見通しの悪い道だった。 左側の歩道を歩いていた私は、後方から車の音が聞こえてきていて後ろから車のヘッドライトで照らされていると気が付いた瞬間、私の体は強く道の前方に突き飛ばされた。 私は、住宅の家の壁に強くぶつかって転んでしまった。 何事が起きたのかわからないまま起き上がって、後方の歩いて来た道を振り返ると、車が住宅の壁にぶつかっていて兄が倒れていた。 私は慌てて兄のもとに駆け寄って、 「お兄ちゃん、お兄ちゃん…」 と体をゆすって声をかけても兄は目をつむったままだった。
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