01 プロローグ「偽りの自分」

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01 プロローグ「偽りの自分」

 私は、自分を偽り続けていた。それも、自分の知らない間に。もう一生このまま、自分でも気が付かないうちに深い苦しみを背負ったまま生きていくところだったかもしれない。あの人と出会うまでは――――。    ☆  瞼と瞼の僅かな隙間から、朝日が優しく差し込んでくる。ああ、今日から学校だったっけと、眼を閉じたまま考えてみる。昨日は高校の入学式、今日から授業が始まる。眼を開けなければいけないのは重々承知している。しかし、なかなか眼を開けることができない。開けられない。開けたくない。だって学校へなんて、行きたくないから――――。  学校が嫌いなわけではない。そうではなくて、私はこの現実が嫌いなのだ。私は絶望している。この世界の人間に……。  ずっと信じてきたもの、信じて疑いもしなかったことが、私にはあった。しかしそれは、ある日一瞬にして跡形も残らないほどに打ち砕かれてしまったのだ。それも、私が心から信じていた人によって。その時、私は悟った。この世界も人間も、信用なんかできるものではないのだと――。  しかし私は学生、高校へ進学することをほとんど強制しているような現代とはいえ、自分で選んだ道である以上、行かなければいけないのはまず間違いない。仕方がないのでベッドから降りて学校へ行く準備をしてみる。  最低限の身だしなみを整え、制服を着て、味のしない朝食を頬張る。  鞄を持ち、靴を履いて、ドアを開ける。雲ひとつない晴れ渡った青空を見て、少しだけ力を貰った私は、声にならないような音で呟いた。  新しい日常が、始まるんだ…………。
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