02 「二人の出会い」

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02 「二人の出会い」

 私は今、自分の教室に向かって歩いている。周囲からは生徒同士の会話がぽつぽつと聞こえてくる。しかし特に気に留めておく理由があるわけでもなく、真っ直ぐに伸びた廊下をただひたすらに進んでゆく。そんな取り留めのないことをわざわざ言語化して、頭の中で思い描いていたら、あっという間に教室の前まで来てしまった。努めて何も考えないようにしながら、私はゆっくりとドアを開けてみる。その刹那、眼前に飛び込んできた人の多さに私は心の中で狼狽えた。なんでこんなに人がいるんだ。もはや原始的とでも表現したほうが良さそうな、一抹の、本当に一抹の不安を感じる。人と話すことがすっかり苦手になってしまった私にこの人の量は、一息で飲み込まれてしまいそうな、そんな錯覚を与える。そんな不安を一刻も早く払い除けたくて、私は自分の座席を探す。ほどなくして、私の座るべき席は見つかった。その瞬間だった。自分の隣の席に座った隣人と私の目が合ってしまったのは。隣席の彼は顔をほんのり紅く染め上げると、今まで忘れていたことをたった今思い出したかのように、ふいっと顔をそむけてしまった。今のは何だったんだろうと思ってみたが、すぐに考える必要のないことだと思い直し、さっきまでと同じように真っ直ぐと自分の席へ向かった。
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