03 「気づいて」
全3/10エピソード・完結
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03 「気づいて」

 私は友達をつくることができない。できないというより、しなくなってしまったという方が正しいか。私の父は海外に単身赴任、母は仕事柄日本中を飛び回っている。そんな私は、幼少期から母に連れられて引っ越しを繰り返してきた。転校、転校、また転校……。新しい友達ができてクラスにも馴染み始めたかと思えばまた違う学校になってしまう……。転校が決まるたび、友達は泣いてくれた。たった私一人のために。私にはそれがとてつもなく辛かった。転校なんてどうでもいい。でも私の大切な友達に悲しい思いだけはしてほしくないと、何度も思った。と同時に、こんなに泣いてくれて、友達だけは私のことを愛してくれていると感じることができた。  あるとき私は、一度通ったことのある学校にまた通うことになったことがあった。私の入ったクラスには、偶然にも前に友達だった人がいた。すごく嬉しくて、私はその人の元へ駆け寄った。しかし、 「え…………と、誰だっけ……」  モーションもないままにいきなり暗闇の中へと突き飛ばされた気がした。信じられなかった。目の前で起きたことが理解できなかった。泣くことすらできず、ただただ真っ白な思考のままいつまでも突っ立っていた事を覚えている。  このときから、私は変わってしまった。「友達なんてもの、絶対に信じられない」  それからというもの、私は一切の友達を作らないようになってしまった。ときには友達がいないせいでいじめられることもあった。たしかに辛かったが、少し経てばまた転校がやってくるし、何より友達に自分のことを忘れられてしまうことが、いじめられることの何十倍も、何百倍も苦しかった。
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