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今更だけど、昨夜カーテン閉め忘れたことが幸いした。
ヴィヴィアンは私に気付いたけれど逃げる様子はなかった。ゆっくりと窓を開ける。と同時にすうっと”ペースト状おやつ”を手を伸ばして差し出す。
案の定、ゴン太と同じように、ヴィヴィアンも首を伸ばしておやつに興味津々だ。そのままじわじわと手を引いて、家の中に誘導する。
おそるべし、ちゅー…いや”ペースト状おやつ”の威力。開発した人天才。
ヴィヴィアンは”おやつ”につられて部屋の中に入ってきた。
とん、と軽い音で床に降りたのを見計らい、窓を閉める。
ヴィヴィアンはハッとして振り返り、閉じ込められたことに気付いたが後の祭りだ。
「フフフ、君はまんまと罠に掛かったのだよ」
またまた悪役めいたセリフを吐きながら、ヴィヴィアンに”おやつ”を差し出した。
ヴィヴィアンがピンクの舌でペロペロとペーストを舐め始めたのを確認して、私はヴィヴィアンを脅かさないよう、でも階下に届くよう少し張った声で言った。
「上田さん、ヴィヴィアン確保しました!」
サラリーマンの名は上田さんだった、と思う。
「ありがとうございます。すぐ行きます!」
弾んだ上田さんの声が返ってきて、ホッとしたところに今度は室内でドスン、と重たい音が響いた。
……忘れてた。
そこにはタンスから飛び降りたらしいゴン太が、恨めしげな顔でこちらを見ていた。
だがビビりのこいつは、突然現れた闖入者であるヴィヴィアンを威嚇することもできず、ちょっと逃げ腰に上目遣いで睨む……というには力がないが……しかないのだ。
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