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それに比べてヴィヴィアンのなんと堂々たることか。初めて入った場所で、元々いた猫なんぞ視界の隅に捕らえただけで鼻も引っかけることなく、二、三度会ったことがあるだけの私の手からおやつを貰っている。
つくづくと美人な猫だ。スレンダーな体と小さな顔。大きな青い目。
感心していると、ダダダダと近所迷惑な足音が近付いてきて、チャイムが鳴った。
「すいません、上野です。ヴィヴィアンを迎えにきました!」
しまった、上野だったか。
「はい、今、開けます」
答えて玄関に向かい、二匹の猫に注意しながらドアを開ける。
「ありがとうございます」
礼儀正しく頭を下げる上田……じゃなくて上野さん。でも
「早く入って!」
もたもたしてたらまた猫が逃げるじゃないか。
「あ、あの、すいません……」
上野さんを中に入れてドアを閉めると、上野さん、何故か目線を斜め上に逸らして、心なしか赤い顔で言った。
なんだ、と思って我が身を見れば、そういえば私は寝起きでパジャマ変わりのスウエット姿だった。
二十代男子には刺激が強かったか。とアラサー女子は思う。が、洗濯し倒して毛玉だらけのよれよれスウェットに色気も何もない気がする。
それ以前にすっぴんだし、髪もボサボサだし。
そのなんだかおかしな空気を破ってくれたのは、ヴィヴィアンだった。
ニャァン
何その甘い可愛い声。
他人の私の胸が疼くくらいだ、飼い主の上野さんは顔をもうこれ以上ないくらいグズグズに崩し、履いていたサンダルを脱ぎ捨てるとヴィヴィアンに駆け寄った。
「ヴィヴィアン、もう、びっくりしたじゃないか。こんなこと二度としないでくれよ?」
抱きしめて頬ずりして、甘ったるい声で囁く。
だが、美人猫ヴィヴィアンは案外クールで、抱きしめる上野さんの顔に前足を伸ばして猫パンチを食らわせていた。
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