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「うちも気をつけないとね。ヴィヴィアンみたいに脱走するなよ」
一応ゴン太に言ってみると、言葉が分かったかのようにゴン太は顔を上げ、またドヤ顔でバタバタと羽を広げて羽ばたいてみせた。
ふわりと体が数センチ浮かぶ。が、そこまでだった。どんなに羽を動かしてもゴン太が飛び上がることはなかった。
どすん、と床に降りる……というか落ちたゴン太は不思議そうに首を傾げ、そして私を見た。
その目は「何で?」と問われているようで……。
「ヴィヴィアンちゃんは優雅に飛んでいたのに、どうして僕は飛べないの?」
などと、脳内アフレコしてみる。
そして、私はかつてない罪悪感に苛まれた。
ゴン太、お前が飛べないのは太りすぎているからだよ。でもそんな真実、口に出しては言えない。
「ごめん、ダイエットしようね」
カリカリのドライフードの袋を手に、私はため息をついた。
羽が生えても、デブ猫は飛べない。
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