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昼からの講義は眠い。
僕はポケットからかなり強いミント味のタブレットの箱を取り出して、手の平の上で中身を振って出した。
二粒も出ちゃった。まあ、良いか。僕はそれを授業が始まる前に口に放り込んだ。爽快感を通り越して痛みが口の中に広がる。うう、痛いけど、目が覚める……!
粒を口の中で遊ばしていると、隣に友人が座って来た。講義が始まるまであと五分。遅刻ギリギリだ。
「遅かったね」
「深夜にバイト入っててさ。今まで寝てた」
「今日は朝から授業取ってるんじゃなかったっけ?」
「それは……代行とか使ってまーす」
「自由だなあ」
「はは。これ以上単位落としたらヤバいし」
彼は机の上にノートと筆箱を並べてから伸びをした。ぱきり、と骨が鳴る。僕の口の中のタブレットも、ぱきん、と音を立てて割れる音が響いた。
「何、食べてんの?」
「眠気覚まし」
「マジ? 俺にもちょうだい」
「良いよ。手、出して」
僕は彼の手の上に一粒、ミントの粒を置いた。勢いよくそれを口に含んだ彼は「ごほっ」と咳き込む。
「辛っ! 何涼しい顔してこんなの食べてるわけ!?」
「そんなに辛いかなあ……」
「辛いわ! お前、辛党?」
「別にそういうわけじゃ無いけど。カレーは辛い方が好きかな」
「この辛さはカレーを通り越している」
彼は涙目になりながらも、ミントの粒を噛み砕いで飲み込んだ。なんだか微笑ましくって、僕はそんな彼をにこにこしながら眺めた。
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