恋人ごっこ

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 それを聞いた僕は微笑んだ。  友達に、そう言ってもらえると嬉しい。 「ありがとう。僕も楽しいよ」 「何かさ……もっと、繋いで居たいって思う」 「手?」 「そう」 「ずっとって? 明日も?」 「そう」 「そっか……困ったね、僕も」  沈黙。  僕たちは無意識に人気の無い公園まで足を運んでいた。  砂場の前で立ち止まる。  彼は、日が暮れた闇の中でも分かるくらい真っ赤になっていた。 「ヤバいよな……こんな、急に……」 「何で? 恋は落ちるものでしょう?」 「落ちるって……そもそも、お前が恋人ごっことか言いだすから!」 「だって、バレンタインなのに寂しそうにしてたから」 「それは……そうだけど」 「ね、僕のこと好きになったの?」 「う……」 「ちゃんと告白してよ」 「やっぱお前、エスだ」  ぎゅっと抱き寄せられた。  あったかい。手も、彼の胸も、あったかい。 「正直、良く分かんねえけど……好きかも」 「僕も良く分かんないけど、何か、ほわってする」 「そっか……じゃあ、付き合う?」 「うーん。お試しにホワイトデーまで様子見る?」 「恋人ごっこの延長ってこと?」 「そう」
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