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僕の提案に彼は頷いて、お付き合いがスタートした。
付き合ったからと言って、特に今までとしていることは変わらない。変わったのは……手を繋ぐことが日常になったこと。朝はさすがに繋げないけど、大学からの帰り道とか、お互いの家でとかで良く繋いでいる。
彼の手は大きくてあったかくて安心する。彼に恋は落ちるものだなんて偉そうに言ったけど、結局は僕も落ちてたんだなあ、としみじみ思う。
そして、一か月後のホワイトデー。
彼から告白されて、僕たちは付き合うことになった。
恋人ごっこから、晴れて本当の恋人になったのだ。
「あ」
僕は前に入った店に新しい貼り紙を見つけた。そこには「ホワイトデー限定! 特別ケーキセット」と書かれている。
「ね、ケーキ食べて帰ろうよ」
「良いけど……照れ臭いな」
「ね、今度は僕に奢らせてね。この間のお返し」
ふふ、と笑った彼の手を取って、僕たちは店の中に入った。
「すみません! 限定のケーキセットお願いします!」
また前と同じ店員さんだった。僕たちのことを覚えていたようで「かしこまりました」と言って席に案内してくれる。
良いでしょう。僕の彼氏。
僕は店の人、それから周りのカップルに見せつけるように繋いだ手をテーブルの上に置いて絡め合った。
照れ臭そうに彼は笑う。
僕もつられて笑った。幸せなホワイトデー。
また来年もケーキを一緒に食べられたら良いな。
そう願いながら、繋いだ手が解けないようにぎゅっと力を込めた。
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