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ピリカのお礼とクジラのお話し
その年、北の島はとても寒い夏でした。
海からの冷たい霧が島全体をすっぽりとおおい、お日さまの光が大地に届きませんでした。
寒さのため、畑の野菜は大きく育たず、山の木々も実を付けず、動物たちも人間もみなやせ細りお腹を空かせていました。
エトピリカは鳩に似ていますが、実はスズメの親戚です、口ばしがとても色鮮やかなので、北の言葉で「美しい」を意味する「ピリカ」という名前をもらいました。
その日もピリカは海岸の上を飛びながら、食べ物を探していました。
「お腹が空いたなぁ~、どこかにニシンや小魚の群れが来てないかなぁ~」
だけど、食べ物はなかなか見つかりません。
「おや、あれは何だろう?」
ピリカは砂浜に大きな魚が打ち上げられているのを見つけました。
それは魚ではなく、とても大きなクジラでした。
「嬉しいなぁ、食べ物が見つかったぞ、それにしても大きいなぁ~」
「クジラのお肉がお腹いっぱい食べられます。カムイ様どうもありがとうございます」
ピリカはクジラの前で嬉しさのあまり、北の島の神様カムイへの感謝の踊りを捧げました。
でも、すぐにお腹を空かしている他の動物や人間たちのことを思い出しました。
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