司馬家の潜龍

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曹操は言った。 「皆の者、喜べ!」 陣営内に緊張が走る。 「遂に我らが無念を晴らす時が来たのだ。あの憎むべき公孫瓚は皇族である劉虞を殺し、大将軍である袁紹を殺した。これを天の法に照らし合わせてみよ、どうだ?!」 この問いに許褚が大音(だいおん)をして応える。 「はいっ! 公孫瓚は一族連座の死刑以外あり得ませんっ!」 「そうだ虎痴! たまにはいい事を言うじゃないか!」 「はいっ!」 「そう! 公孫瓚は死刑以外はあり得ぬほどの、大きな過ち、暴挙を犯したのだ!」 全武将は得物を取り立ち上がった。 「皆よく聞け!もうこの天において、我が友で大将軍の袁紹(えんしょう)は死に、公孫瓚を裁けるものはこの曹操しかおらぬようになった! この曹操こそ最後の忠臣なのだ! 皆の者力を見せよ! この天命を遂行し、天下に我らの名を轟かせるのだ!」 「おおーっ!」 かくして、曹操は戦の準備を終え、公孫瓚との決戦に臨んだ。 対するは強敵、華北一帯を支配する白馬長史、公孫瓚である。 曹操は長安との境である洛陽の守りに満寵(まんちょう)曹仁(そうじん)を置いて、兵糧の守りには曹洪をつかせた。 自らは夏侯兄弟や呂布、張遼などを引き連れ、進軍した。 まもなく、山陽にて天下を分かつ大戦(おおいくさ)。 その幕が開けようとしていた。
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