大輪の弓

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中山斉王劉勝(ちゅうざんせいおうりゅうしょう)の末裔、劉備(りゅうび)(あざな)玄徳(げんとく)が統べる穎陰(えいいん)蔭城(いんじょう)。 ここに二人の訪客の姿があった。 一人は劉備の妻だと喋々(ちょうちょう)しいことを言う女、孫尚香(そんしょうこう)。 そして、その従者と名乗る偉丈夫(いじょうぶ)黄蓋(こうがい)。 城内の者は二人が城に来訪してからここへ着くまでに不快な、或いは怪訝な顔を向けていた。 当然である。 ここへ着く前に父であるという江東の孫堅(そんけん)に会っては、そんな女は知らぬと追い返され、その悪評とともに蔭城に着いたのだ。 この噂を聞いた誰もが、孫堅同様門前払いされる思っていた。 しかし、劉備がこれを認めた。 この事によってその状況は一変する。 「孫尚香……やはりそなたであったか」 まさか、彼女らの言っていたことは本当だった? 皆は唖然とした。
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