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「……い、いかんいかん。集中、集中!」
自分に言い聞かせて両手で自分の頬を叩いた。
正直なところ好戦的で、常に好敵手を求める太史慈にとっては厳白虎のごとき、不満のある相手である。
しかし、孫策からあれほどの期待をうければ、忠臣としての血がその期待に応えんと、粉骨砕身せずにはいられなかった。
「孫策様はそれがしに功を立てさせ、将来は重く用いたいと仰っていた。これも一つの試練だ」
そうこう考えているうちに厳白虎が目前までやってきた。
「よし、それでは手順通りに……」
太史慈は厳白虎が着た頃から密かに包囲陣を組ませ、厳白虎という名の鹿を狩る準備を整えていた。
やがて機は熟した。
「よし、今だ! 者ども、斉射せよ!」
太史慈が弓兵とともに立ち上がり、
「放てえっ!」
号を放った。
同時、林道に鏃の雨が降り注いだ。
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