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荊州の桂陽城下は大いに賑わっていた。
小覇王、美周郎と喬家の二花との婚儀が行われたという噂が広がったからである。
桂陽城では各国の銘酒や珍味が高価な大皿に盛られ、肉山脯林のごとく大宴は盛り上がった。
多色多彩な奏楽、それに花弁のように舞う踊り子達。
しかし、今日の主役は間もなく来る若い花婿達である。
孫策、周瑜は錦の着物を清雅に着こなし、その態度は堂々としていた。
眸は穏やかでいて清流のごとく力強く、凛とした佇まい。
来賓の席からは婚儀なのにもかかわらず、喜悦する女達の歓声すらあった。
そんな様子を孫策は眺めて、
「――なあ周瑜」
「なんだ?」
「喬姉妹は確かに月の光をもかき消してしまうほどの麗女であるが、我等を夫にできる二人もまた、幸せ者だとは思わんか?」
上機嫌に言った。
周瑜は可笑しげに笑った。
「ははは、今日の君は随分惚気るな」
「今に始まった事でもないだろ?」
「それもそうだが……」
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