17人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
第1章:一節───『永独』の勇者
未来も過去も勇者にはない。
目的はいつの間にか忘れ去り、勇気は無謀さのハリボテ。
自由と正反対であり、精神にすら束縛を与える。
精神崩壊からの死。勇気の職業を与えられた者の成れの果てである。
苦しみ、悲しみ、虚しく死んだ英雄達に向けられる感情はいつまでも哀れみ。次の世代に渡ればそれすらもなくなる。
きっと俺もそうなるのだと、ある時考えていた。真冬の夜、暖もとらずに。
その時、部屋の戸をコンコンと誰かが叩く。「どうぞ」と掠れる声で答え、少しして扉が開く。
「──────」
「あぁ‥‥」
「──────」
その人は眩しい笑顔を咲かせ、声をかけてくれた。
「──────」
なんて言っていたのか不鮮明で、思い出そうとしても分からないまま。
彼女はなんて言ったのだろうか───
最初のコメントを投稿しよう!