第1章:一節───『永独』の勇者

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第1章:一節───『永独』の勇者

 未来()過去(うしろ)勇者()にはない。  目的はいつの間にか忘れ去り、勇気は無謀さのハリボテ。  自由と正反対であり、精神にすら束縛を与える。  精神崩壊からの死。勇気の職業を与えられた者の成れの果てである。  苦しみ、悲しみ、虚しく死んだ英雄達に向けられる感情はいつまでも哀れみ。次の世代に渡ればそれすらもなくなる。  きっと俺もそうなるのだと、ある時考えていた。真冬の夜、暖もとらずに。  その時、部屋の戸をコンコンと誰かが叩く。「どうぞ」と掠れる声で答え、少しして扉が開く。 「──────」 「あぁ‥‥」 「──────」  その人は眩しい笑顔を咲かせ、声をかけてくれた。 「──────」  なんて言っていたのか不鮮明で、思い出そうとしても分からないまま。  彼女(・・)はなんて言ったのだろうか───
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