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「───、───君!」
誰かの声が聴こえる。耳の奥で木霊する優しい声は夢の中でも聞いた気がする。
「───カイ君! カイ君!!」
「‥‥んん、あぁ?」
「あっ! カイ君、よかったよぉ」
目覚めは悪くない。頭が少しばかり曖昧だが、誰かに起こされるのは慣れないが気分がいい。
起き上がり、涙目で俺を見つめる少女の手を包むように握る。
「おはよう、ノア」
「おはようじゃないよ! もぅ、戻ってこないからって見に来たら倒れてるんだから‥‥。はぁ、心臓に悪いよ」
怒ったり泣いたりと色々忙しく表情を変えるこの少女の名はノア=プリンクス。俺の幼馴染みで勇者である俺の数少ない仲間である。
艶やかな紅の長髪は光を反射する程手入れが施されており、女子力の高さが伺える。
学園時代に男女問わず恋人申請書を送られる程の人気者で、けどノアがそれらの類いを受け入れた噂や光景を一つも知らない。
そんなノアとよく喋っていた俺は頻繁に暗殺されかけられ、その度に撃退をくり返していた。平民の生まれであったが、伊達に学園Top10に入っていた訳ではない。
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