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プロローグ:勇者が不老不死になる直前に
そびえ立つ巨城──魔神城を前に、俺の心は高ぶっていた。
この5年間、この瞬間をどれだけ待ち望んだことか。ギルドで馬鹿にした冒険者どもを、依頼のたびに笑った貴族どもを、最後の最後で俺を裏切った仲間どもを見返すために、人生を棒に振ったのだ。
重厚に造られた扉に手をかけ、勢いよく吹き飛ばした。
「客人よ、ようこそ我が城へ」
手を広げ、歓迎の意を示す男はこの城の主にして人類の敵である者──魔神王だ。
「我が配下の襲撃はどうだったかな?」
「少し物たりないかな。でも、その分アンタが戦んでくれるんだろう? がっかりさせないでくれよ」
「期待に沿えると嬉しいね。では、始めようか‥‥」
魔神王の言葉が途切れると同時、室内の空気が一変した。真冬のような冷たさがただよい、けれども汗が頬を流れる。重力が何倍にも膨れ上がったと感じ、不意に意識が乱れる。
魔神王は隙を見逃さなかった。
「ンンン──!」
振るうは豪腕。空気を切り裂き、俺に迫る。
「《超速回避》ッッッッッ!」
全力の緊急回避は成功し、魔神王の視界から外れる。
「くっ‥‥」
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