apart

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「……赤ちゃん」 「え?」  麗子が指差す先には、まあるく膨らんだ母のお腹があった。 「麗……おらがお母さんのお膝さ座ったら、赤ちゃん苦しくなるっぺ」  母は麗子を抱き寄せた。 「麗ちゃんは優しい子ね、ありがとう。でもね、お母さんにはもっとわがまま言っていいのよ」  麗子の腕が母の首元に巻きつき、ギュッと抱きついてくる。少し苦しいが、ここは我慢しなければならない。  自分が妊娠したことで、この小さな身体に、かなり我慢をさせてしまっていることを、母は痛いほどに分かっていた。 「あとね、無理して仙台弁をしゃべらなくていいのよ」  胸に顔を擦り付けるようにして、麗子は首を横に振った。 「自然にお話しできるのはいいのよ。でもね、麗ちゃん」  麗子の細い身体を引き上げると、自分の膝の上に座らせ優しく見つめた。 「無理してしゃべるのは大変でしょう? 標準語だと、お友達になにか言われるの?」 「……ううん」  俯いた顔がよく見えるよう、母は麗子の前髪をかき上げた。白いおでこの下の瞳はかすかに潤んでいる。 「どうして、無理してお話しするのかな? お母さんに教えてくれる?」  麗子はただ首を横に振るだけだ。麗子の固く噤んだ口が開くまで、母は根気よく待つことにした。
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