ミステイク

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 喉が痛い。  風邪でも引いたのかと、夢の世界とリアルを行き来しながら麗子は考えた。鼻の奥も痛いような気がするし、頭も痛い。その上、口の中がザラザラカサカサして気持ち悪い。  嗅ぎ慣れない匂いがする。なんだろう、クリーニングに出したリネンの匂いだろうか……?  睡魔に突き放され、重いまぶたを少しずつ開けると、麗子は自分が布団の中で寝ていることを理解した。  響くような頭痛に吐き気を覚える。ゆっくりと顔を横に向けると、隣りに眠る男が視界に入った。  人は驚くと、声が出ないものらしい。呼吸すらままならない。    長いまつげも通った鼻筋にも見覚えがある。  なんて美しい寝顔だと、浅い呼吸を繰り返しながら麗子は、隣りに眠る澤山の横顔を見つめた。    落ち着こう、冷静になろう、そう思えば思うほどに心臓は早鐘を打ち続ける。  掛け布団から、澤山の肩が見えている。  ということは澤山は裸ということだろうか。自分はどうだろうかと、身体に意識を集中させた。起こすことが怖くて、身体を動かすことができない。感覚としては、下着もつけているし何か服ではないものを着ているようだ。  目玉だけを動かし部屋の中を観察した。  ビジネスホテルとは違うように見える。ラブホテルかもしれない、そう考えた瞬間に身体の奥から熱が込み上げ、顔が赤くなるのを感じた。  昨夜何があったのか。  混乱し沸騰する脳内で、記憶の糸を手繰り寄せた。
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