ミステイク

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 お店では、坂井に散々飲まされた。坂井は厄介な絡み酒タイプなのだ。酔うとやたらと後輩に飲ませたがる悪い癖がある。  壮行会が終わり、こっそり帰ろうとしたら坂井に見つかり、無理矢理カラオケに連れて行かれた。さらに飲まされそうになっていたところを羽川が助けてくれたのだ。とにかく気持ち悪くてトイレに駆け込んだところまでは覚えている。  それで? そのあとは?   キレイな顔で眠る澤山を横目で見る。カラオケでの記憶の中に澤山はいない。  それなのになぜ今、澤山とラブホテルにいるのか。  記憶を無くし酩酊状態になるなど初めての経験である。途方に暮れる麗子は、ただ天井を見つめた。 「……起きたんですか?」  呆然と天井を見る麗子の耳をバリトンボイスがくすぐる。もぞもぞと布団が動く。肩に澤山の熱が伝わるようで、やけにくすぐったく感じる。ゆっくりと顔を向けると、澤山が麗子を見ていた。  澤山は寝返りを打つと身体を横向きにした。真正面から麗子を見据える。
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