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肩が見えるだけで、なぜこんなにセクシーなのだろう。ただでさえ息苦しくて仕方がないのに、意外にがっしりした肩のラインから目が離せない。
「どうしたんですか?」
澤山の腕が伸び、長い指が麗子の髪に触れる。麗子は仰向けのまま、固く目を閉じた。
金縛りにあうとこんな感じなのだろう。関節全てが石のように固まってしまい、数ミリも動けない。それなのに、心臓だけは大きく大きく跳ねている。この音が澤山に届かないよう、麗子は願った。
「なんですか、その反応。……夜はあんなに積極的だったのに」
髪に触れながら、甘い声で囁く。積極的にだなんて絶対に嘘だと、反論したいのに声が出ない。脱脂綿で口内中の水分を取られてしまったのではというほどに、喉はカサカサだ。
「……冗談ですよ」
髪に触れる指がさっと離れる。背筋が凍るような無感情な声に麗子は驚いて顔を向けた。
やはり、澤山は氷の王子だ。
きつい冷ややかな眼差しに、大きく跳ねる心臓はキュッとすっかり縮こまってしまった。
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