ミステイク

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「服はシワになるので脱がせました。ほら、そこに掛けてあります」  澤山は身体を起こしドアの横のハンガーに掛かる服を指差した。上半身を露わにする澤山をまともに見れず、麗子は固く目をつぶったままコクコクと頷くことしかできない。  呆れた様子で澤山はため息をついた。 「下着のままで寝かせるのはどうかと思い、ここのホテルに備えられているものを着せましたが、それだけですよ」  それだけということは、それだけということなのだろうか?  麗子は固く閉じていた瞳を恐る恐る開け、澤山を見上げた。男の裸など見慣れているわけがないのだ。目のやり場に困り、結局また目を伏せてしまう。 「あなたの下着姿は見ましたが、必要以上に身体に触れてはいません。だいたい、泥酔した女を抱くような卑劣な真似はしませんよ」  下着姿を見られてしまったということか。履き心地が良くて愛用しているコットンのショーツを穿いてこなくて良かったとホッとする自分に気付き、そんなバカなことを考える自分への羞恥心に耐えきれず麗子は布団を頭までかぶった。
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