惑う花唇【コミカライズ原作・彼の好きな人は、私を好きな人】

粉微塵にされた淡い想い

「麗子の気持ちには応えられない」

　なぜ、こういう日はいつも天気が悪いのだろう。よりによって、台風最接近の夜にぶつけてしまった。立てないほどの強い風に吹きつけられた大粒の雨が、健吾の部屋の窓を殴りつける。

「俺さ、ゲイなんだ。麗子のことは異性の中で一番好きだけど、俺は同性愛者なんだ」

　薄々そんな気がしていた。
　でも、健吾の口から聞かなければ納得できない、麗子はそう思っていた。
　そして、それが健吾をひどく傷つける愚かな行為でしかなかったことに気が付くのは、もっと後になってのことだ。