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麗子は眉を下げて笑う健吾から目をそらした。
「ごめんなさい」
「謝るのは俺のほうだ」
麗子は俯くと首を横に振った。
守るつもりが、親友として近くにいるつもりが、何をしているのだろう。誰よりも近い位置にいることを利用して、健吾に甘え玉砕してバカみたいだと、自分勝手な憤りを感じながら麗子は立ち上がった。
十畳ほどの部屋にベッドとテレビと小さな棚があるシンプルな部屋だ。ベッドを背に二人は座っていた。立ち上がる麗子を健吾が見上げる。
「帰るわ」
「……正気?」
「駅まで戻ってタクシーを拾うから大丈夫よ」
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