粉微塵にされた淡い想い

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 健吾は麗子の腕を掴むと元のように横に座らせて肩を抱いた。 「台風、すごいぜ?」  忘れていた。今夜は不要不急の外出は控えるようテレビでしきりに叫ばれるほどの荒天なのだ。 「泊まってけよ」  なぜこんなに甘いセリフをあっさりと吐き出すのだろう? 「だって……私は健吾のことが好きなのよ?」 「うん」 「私を恋人にはしてくれないくせに、泊まってけよなんてひどいじゃない」 「……そうだよな」  麗子の瞳から涙が落ちる。どうやったって振り向いてもらえない男に対して、多くの女たちがあざとく使うこの武器はなんの役にも立たない。 「俺は麗子が好きだよ。でも、ダメなんだ。恋愛対象として女性を見ることが出来ないんだ。欲情も出来ない」  改めて言われると、余計に苦しさが増すような気がする。
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