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「……ごめんな」
健吾は掛けていた毛布を手にするとベッドから降りた。
「麗子の気持ち考えてなかった。……そうだよな、友達同士は抱き合って寝ないもんな。なんか、抱き枕みたいで麗子を抱きしめていると気持ち良くて、麗子の気持ち無視してた、ごめん。俺が下で寝るから、麗子はベッドを使って」
バツが悪そうに健吾はそう言うと、高いところから頭をぺこりと下げて、ラグの上に寝転がった。
こういう、飾らないところが好きなのだ。健吾は嘘は言わない。麗子に対していつも正直に素直に接してくる。
「健吾」
「……うん?」
「いいわよ、抱き枕にして」
背中を向けたまま、沈黙している。麗子の気持ちを推し量っているのだろう。
「健吾に抱きしめられて寝たいわ」
誘うセリフにしか聞こえない。麗子は耳が熱くなるのを感じた。
でも、この誘惑は健全な誘惑で、性的な誘惑には健吾は乗ってこない。その事実が麗子の胸を締め付ける。
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