僕の女神・ 3.桜の花びら

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「勇次、あそこに座りましょう」  空いているベンチを見つけ、麗子が駆けていった。平日の午後、のんびりしたものだ。  勇次は午前の飛行機でドイツでの赴任を終え、日本に帰ってきた。  明日からは麗子と同じ本社勤務だ。  有給を使って迎えに来た麗子とともに、コンビニで遅い昼ご飯を買って公園に来たところだった。 「勇次」  ベンチに座り、桜の木々に見惚れていると、麗子に袖を引っ張られた。目玉だけ動かして横に座る麗子を見る。嬉しそうに笑う麗子が、指を絡めてきた。 「あなたがとなりにいるなんて、夢みたいだわ」 「今日からはいつもとなりにいますよ」  はにかむ麗子が下を俯いて、もたれてきた。そのまま何も言わない。  泣いている気がして、滑らかな頬に手をかけて顔を覗き込んだ。  あたりだ。  涙がほろりと美しい瞳からこぼれ落ちた。 「長い間寂しい思いをさせてすみませんでした」 「寂しくなかったわ。みんながいたもの」 「本当に?」  麗子が形のいい唇を噛んだ。 「会いたかったわ」  今日の麗子は、ずいぶんと素直なようだ。勇次は笑うと、頬をこぼれる涙を親指ですくった。 「僕も会いたかったです」
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