第一章 師と弟子と厄介な夢

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第一章 師と弟子と厄介な夢

本日晴天、晴早朝。 鈴命寺前の広場にて月一で行われる定例の大朝市は、以前から街中のものらがここぞとばかりにこぞって珍品を出していたところに、最近では遠方からの売り子も増えて、最早「喧噪」と呼ぶに相応しいものとなっていた。 妖魔、人間、妖精、ごった返している。 ただの朝市とは思えない、派手な小袖を着た女や、名古屋帯を巻き・口には紫の紅を差した女装の男、羽織を斜に着て・肌にはおしろい目元に隈取りの歌舞伎者、緑のゴツゴツの肌へ紅の講師模様をあしらったトカゲ型の妖魔、最近流行りだした袴にブーツを履いた女や、洋装の女などなど、競うように着飾るものも居た。 しかしそれらは、あふれんばかりの「ヒト」の数に押し潰されて、個性など消し飛ばされ、ただ「ヒトの塊」としてそこへ配置されているに過ぎなかった。 空には、飛び交う妖精使いや、「紫鶏」・「瞑蝶」といった空を飛べる低級妖魔に乗ったヒトなどが居るものの、地上に比せば遥かに平和だった。     
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