オホド

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 ヒノミは、艶やかな黒髪をゆるやかに背中に垂らし、髪を結うこともせずに野山を駆けまわる事を好むような娘だった。  一方オホドは、男にしてはなよやかで、雲を眺め、花を愛で、虫の声に耳を澄ますような、どこか風雅な所のある男だった。高貴な生まれといっても、それはもう何代も前の事で、今は雲上の都から遠く離れた未崎の地で、土地の名士の娘の元へ婿入りするものだとばかり思っていた。  事情が変わったのは、当代の王が後継を決めないまま若くして死んでしまった為だった。
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