オホド

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 悪逆非道、傍若無人を絵に描いたような、若く尊大な王が病で死んだとはにわかに信じがたい事だと、都からの使者と対面したオホドは思った。  しかし、使者の様子を見て、王は密かに殺されたのかとも思った。やって来た使者は宮廷の者では無く、大臣の子飼いの者であったからだ。遠い僻地に住まうオホドにもわかる。金色の髪に翡翠のような色の瞳は、黒髪黒目揃いの斗真の国においては異端だ。そして異端であるがゆえにその人物が大臣の家令、ソニだという事がわかったのだった。 「さて、使者殿、いや、ソニ殿……と、お呼びすべきか」  いくら血筋を分かつこと数代とはいえ、王の末裔たるオホドはなめられまいと虚勢をはる。そんな田舎者の小芝居などに興味は無いのか、美貌の使者はかしこまったやりとりを早々に切り上げて、用件を告げた。  曰く、即位を。……と。
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