ヒノミ

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 王が死に、後継がおらず代を重ねてはいるものの、王族の末裔であるオホドが次代の王に指名され、既に旅立ったのだと聞いて、ヒノミはまず怒った。昨日今日の仲ではないはずの自分に、一言の別れも告げずに去ってしまうとは、何という薄情、何という裏切り。  しかし、ソニが見せた花籠と手紙を見て考えを変えた。  手紙には、こうあった。 『めぐり逢うべき月影を、秋の頼みに残すなり』  ヒノミが、オホドの言葉の記された手紙を愛おしそうに胸に抱く様を見て、ソニは冷ややかに言った。 「オホド様は、王の姉君を正妃となさいます、自らが一の人になれるなど、身の程をわきまえない望みは抱かないのがあなたの為です」
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